屋外が80デシベルという音量を超えても、お部屋はリビングに求められる音量50デシベルにできることは計算してすぐにわかりました。ただし音の質(目立たない音にする)の設計にはとても時間がかかりました。
工事後のお部屋の音の設計はガラスを使い分けることで可能となります。それは、ガラスの種類と厚みによって防音できる音域と音量が異なるからです。音量は同じ50デシベルであってもガラスによって、工事後のお部屋の音は変わります。
Sさんの家の前は開けた公園ですから、音を遮るものがありません。ビル街のようにビルとビルの間を反射することもなく、電車の音はそのまま素直にお部屋に入ってくることもあり、車両ごとの電車の音の違いがはっきりとしています。電車の音であるのに、この絞り込めない音に対して、どうすすれば、どの電車でも容認できる音に変えることができるのか。また、5mの距離ですから電車の音に圧があります。とにかく、柔らかい音に変えて、圧を感じさせない音に変えなければ、目立たない音にはできません。
壁の工事はしない。=壁を通り抜ける電車の音があることが前提で、室内50デシベル以下を維持する。その上で、Sさんが一番嫌いな手前の線路を通過する特急電車が気にならない音にする。さらに、車両ごとに違う電車の音色をソフトに聞こえるようにする。難題が多い音設計でした。