住宅で最も出荷されているペアガラス(3ミリガラス+中空12ミリ+3ミリガラス)の防音性能にいて2ページにわたり述べました。今回はペアガラスがなぜ問題を起こしているのかを考えたいと思います。
ペアガラスの普及経緯
「高断熱住宅」「高気密住宅」という言葉をご存知ですか。
お部屋の熱環境を建築技術で整えて、快適性と省エネ化の両立を目指す家づくりです。そのためには壁や天井・床に断熱材を入れるのですが、建物を構成するパーツで(建築では建物部位と言います。)最も熱的性能が弱い窓ガラスには、単層ガラスではなく必ずペアガラスかそれ以上の断熱ガラスが使われます。
壁の中身や天井・床の中身は見えませんが、窓ガラスがペアガラスであるかどうかは、目で確認できるのですから、建築とは無関係のみなさんでもすぐにわかります。このことは売り手にとってはセールスチャンスです。他社の窓が単層ガラスなら最も分かり易い差別化ができます。1枚より2枚と数が多い方がなんだか良さそうだと思いますよね。90年代中期から2000年代後期までの15年は、断熱材を入れずに窓ガラスをペアガラスにして「高断熱住宅」として売り出す人たちもいました。
だんだん競争が激しくなり、「ペアガラス」だけでは差別化できなくなり、そして、温暖化や住宅エコポイント、東日本大震災を経て急速に断熱化が進みました。それまではスカスカで隙間だらけだった壁の中身も、断熱材をビッチリ詰めるようになってきました。このことにより断熱性能だけでなく、同時に壁などの防音性能が急激に上がりました。
高断熱化による音の問題
それまで何もなかった壁の中に物が詰められ隙間がなくなり、壁は結露防止の観点から壁材を張り付ける前に特殊なビニールシートで密閉されます。そして最後の仕上げはビニールクロスとさらに隙間はこれでもかとなくなります。
断熱性能が高いとされる住宅ほど、「密閉」「隙間なく密度の高い断熱材をギューギューに詰める」ことを徹底的にやります。そしてこの断熱の厚みは厚いほど当然性能は高くなります。ハイスペックな住宅になると断熱層で30センチにも達します。このような住宅は東京にも存在しています。
防音手法は隙間がないこと「気密が確保されている」ことが前提で成り立ちます。そして断熱材は吸音効果があります。つまり断熱性能が高いほど壁の防音性能は高くなります。
防音性能が上がるということは、外から音も入りにくくなるものの、一度入った音は壁を通り抜けることができなくなるという事でもあります。
ペアガラスは人の声などの周波数帯においては防音性能が悪く、それ故に窓ガラスを通り抜けてお部屋に侵入してくる騒音の音量は以前よりも大きくなっている。これだけでも苦痛なのに、以前なら壁から通り抜けられた音は、防音性能が高くなった壁から外に出ることができずお部屋に中に跳ね返ってくる。それは響きやうねりとなって人の耳には大きく感じる。
そして最後のダメ押しは、生活様式はどんどん和風から離れ、お部屋はフローリングなど音を吸収できない材料ばかりであることです。これでは騒音の三重苦です。
まとめ
- 壁は音を遮断することができるようになった。
➡外から音を入れない代わりにお部屋の中の音も外に漏れない。
=音は入ったら最後出口なし。高断熱住宅ほど要注意。 - ペアガラスは人の声などの周波数帯に最も弱いガラス
➡外から入ってくる音量は大きくなる。 - 生活様式が変わり、音を吸収するものがなくなった。
➡音が室内で跳ね返っている。
解決手だて
- 原則は、音を入れないことです。その為の工夫をします。
➡内窓もその一つです。
- 音の室内反射を防ぐ。
➡つまり吸収できるものを増やす。カーペットや本。服なども有効です。
(大通りに面してもいても本屋さんは静かですよね。本は重く吸音できるので優秀な防音材です)