どこまで落とせば静かになるのだろうか
窓の防音対策で内窓が選ばれるのは、施工が難しくなく、いつでもでき、そして確実に最も音を小さくできアイテムだからです。
「どこまで音を下げればいいの?」そんな声が聞こえそうです。
「わかった。内窓は40デシベル落とせるのね。それでは、何デシベルにすれば静かになるの?」このようにあなたが質問したくなるのもよくわかります。
騒音計で計ったときに寝室ならば40デシベルというのが一つの目安です。そのほかリビングなどは50デシベルというのが一般的に言われている環境です。
幹線道路の歩道などでは80デシベルほどの音量を騒音計は示しますが、このような屋外の音を内窓はお部屋を40デシベルにすることができる力を持っています。
騒音レベル |
相当する環境 |
うるささの程度 |
50dB(A) | 一般事務所 | 普通(日常生活) |
45dB(A) | リビング・小会議室・教室 | |
40dB(A) | 寝室・図書館 | |
35dB(A) | 病室・音楽室 | 静か |
音の単位のデシベルって何?
デシベルは音量(音圧)の単位です。「dB」と書きます。一度はお聞きになったことがある単位だと思います。ただ、少し厄介な単位です。日常生活でお世話になる単位、例えばKg(キログラム)。20Kgは10Kgの2倍です。当たり前の話ですがこれがデシベルの話になると、20dBという音量は10dBの2倍ではありません。3倍が正しい答えです。
デシベルの世界は高校生の時に勉強した「対数(Log)」です。とても大きな数字を扱わなければならないときに便利なのですが、上記の「3倍」のように日常感覚と少しずれているところもあります。
デシベルは台風の季節になると、天気予報でよく耳にする「パスカル(Pa)」という単位を対数で言い直したものです。基準とするのは人の耳です。人の耳は0.00002パスカルという小さい音から20パスカルという耳が壊れる寸前までの音を感じ取ることができます。最小値と最大値で100万倍も違いますので、なんとなくピンとこない。そこで対数にわざわざ直したデシベルで表現されます。
パスカルは「圧力」の単位です。音は空気を押して伝わりますので「パスカル」という単位も使われます。(力ですからワットWに置き換えることもできます。)
「風」も空気を押しますが、音がしても風を感じないのは、最大音量でも1/20,000気圧と、とても空気を押す力弱いからです。
騒音計の数字とデシベルの関係
騒音計の数字は人の耳が感じとれる最小音量0.00002パスカルを0dBとし、最大音量20パスカル=120dBまでの音圧を対数で表したものです。
※騒音計という呼び方が一般的ですが、正しくは「サウンドレベルメーター」といい、音圧≒物理的な音量を図るものです。
2つの音の差が〇〇デシベルある時、その差を対数ではなく自然数の倍率に直して表にしてみました。
デシベル | 倍率 対数→自然数 |
0デシベル | 1倍 |
6デシベル | 2倍 |
10デシベル | 3倍 |
20デシベル | 10倍 |
40デシベル | 100倍 |
60デシベル | 1000倍 |
6デシベルというと小さな差だと思われがちですが、これが実は2倍の差だとわかるとすごいことだという事がわかります。そして内窓を設置すると40デシベル落とすことができるとされいていますので、1/100の音量(音圧)にできるという事になります。
落ち着いて考えましょう。 よくある誤認
「内窓は音量を1/100にすることができる」
「音が1/100にもなる」なんだから、なんだか凄そうと思います。無音になるんじゃないか。少なくてもものすごく小さくなるようになると期待したくなりす。何せ1/100ですから。
でもここは今一度落ち着いて考えてみてください。聞き取れる最小音量と最大音量は100万倍も違うのでのでしたよね。それともう一つ付け加えると、音圧、物理的な音量≒エネルギー量であって、これは、聞こえ方と同じかどうかという事を検討する必要があります。
「ペアガラスだから防音効果は高い」
ペアガラスは防音効果が高いと一般的には言われているようです。ペアガラスは2枚のガラスでできていいますから、1枚よりも2枚ガラスのほうが防音もできると思うかもしれませんが、くらしの中の騒音とはずれていることが多いです。詳しくはこちらで解説をさせていただいています。>>
「内窓は40デシベルの防音性能」
「内窓の防音性能は40デシベル」とお聞きになると、これから工事をする(新設する)内窓の防音性能がマイナス40デシベルの力を持っていると、あなたはきっと思われたはず。そう思われても無理がないと思いますが、これ、間違いです。この誤認をする人は驚くほど多いです。
内窓という商品は、そもそも窓があって、その窓に室内側から窓足して上げて、簡単に二重窓の状態にするための「窓材」です。つまりメーカーは内窓を二重窓の1アイテムに過ぎないと考えています。内窓の防音性能は窓が二重にきっちり閉まっている状態で防音試験をすることになっています。この二重窓の状態で40デシベルの防音性能なのであって、追加した内窓単体の性能が40デシベルなのではありません。
このことはカタログをよくよく見るとどこかに書いてありますが、小さな文字であってり、後ろのページに記載がされているなど、とにかくわかりにくいです。そして記載を読んでみると、
「最初からある窓は、〇〇社の△アルミサッシに□ガラスが入った状態で、増設する内窓には◎のガラスをはめ、窓と窓との空間が×センチ空いている事。」
のような細かな条件が書いてあり、同じ条件であることはなかなかないはずです。果たして自分のお部屋の窓がこの条件に合致するのかは、お分かりにならないと思います。さらに言えば当然、今のお使いのサッシの状態なども影響するでしょうから、本当のところはわからないのです。
せいぜい言えることは「正しく工事ができれば、建築当初からある窓も新設する内窓もしっかり閉めれば、カタログに記されているマイナス40dBの可能性=屋外80デシベルの音が室内で40デシベルに聞こえる可能性がある。」という事だけです。
じゃ、一体内窓単体の性能はいくつなの?
関心があるのであれば誰もが思う事です。でも少し落ち着いて考えてみると、どのガラスを使って試験をすればいいのだろうか?という疑問が生じます。内窓にはめることができガラスは厚みの違いや、種類の違いによって254通り考えられます。また、内窓フレームも複数のメーカーが製造していますからこの掛け算の答え、つまり内窓の組み合わせは1000通りを超えます。公正に比べて性能を調べるには、この可能性の数だけ、1000窓超の内窓を用意して、同時に一斉に試験するしかありません。あきらめるのは良いことでありませんが、やはりこの方法は現実的でありません。
でも、どのこまで音を落とせる可能性があるのか。その手掛かりは落ち着いて考えれば専門的な知識を持っていないあなたでも見えてきますよ。ここ深く一息ついてじっくり考えてみましょう。
内窓を考える
何が音を小さくするのか
内窓の構成しているのは、ガラスとサッシの2つだけです。両方とも音を小さくしているのでしょうか?それともどっちかが音を小さくしているのでしょうか?
きっと、もう、お気づきになったと思います。ガラスですよね。という事は、サッシにはめることができるガラスの防音性能で決まると考えられます。ガラスのお話をしたいのですが、その前にほんのちょっとだけ後回しにします。防音でもっとも大切なことを先にご説明しなければなりません。
サッシは何をするのか
音を小さくするためには、隙間をなくすことが大事です。このことを気密と呼びますが、この気密が確保されていないと、隙間から音は出たり入ったりします。ですからできるだけ気密を上げ密閉状態にすることが大事になります。この仕事をするがサッシです。サッシを選ぶ際は、この気密に関するデータを見て判断する必要があります。
それならば自分で試験をするしかありません。今度は試験体が8個で済むのでこれは横並びでテストをしてデータが取れました。また、この試験は他にそれぞれのフレームのどこに弱点があり、どう補ってあげればよいのかという次のテーマに繋がり、これも貴重なデータとなり、オリジナル部材の開発に繋がりました。
ガラスは何をするのか
気密閉状態が確保できているのであれば、音を小さくするのはガラスです。厚みの薄いガラスよりも、厚みが厚いガラスのほうが音量を下げることができます。あなたも経験上ご存知だと思います。
実は、これ、質量測という原則でもあります。重ければ重いものほど、ガラスで言えば厚みが厚いほど音を外に跳ね返す=遮断することができます。
内窓にはめることができるガラスの中で最も防音性能が高いガラス単体での防音性能は38デシベルです。これは公的な試験データですので信頼できる値です。
でもこれは実験データをもとに推定できる理論上の上限値です。内窓(サッシ)は完全密閉することができません。内窓も完全固定型にすれば100%にすることもできるかもしれませんが、多くの窓は「開けたり閉めたり」と動かします。窓に「動く機能を持たせる」という事は、どうしても小さな隙間ができます。ですから、上限ガラス38デシベル×サッシの密閉率(気密)というのが、内窓単体の防音性能と言えます。
気になる音について今一度考えてみる
音は音量だけではありません。多くの人がこのことを忘れています。テレビのボリュームを下げれば確かに音は小さくなりますから、「音量」を下げればいいと誰もが思います。これは不思議なことではありません。
でも音には「高い音」「低い音」とい音程があります。これには異論はないはずです。高音ですとか低音ですとか、音程とか言い方は様々ですが、これ、周波数です。
この世の中、どの周波数においても、等しく〇〇デシベル落とせる防音建材はありません。すべての防音材は防音効果が高い周波数と、防音効果が薄い周波数が必ずあります。
カタログの〇〇デシベルが意味しているのは、低音から高音までの平均値である場合や、評価基準となる特定の周波数においての防音量です。必ず細かな字で書かれている補足か別ページに書かれている説明を読みとく必要があります。
ガラスの数だけの防音材があります
当然ガラスにも特異な周波数と苦手な周波数あります。どの周波数をどのくらい落とせるのかは、内窓にはめることができるガラスの数だけ、つまり254通り存在するわけです。
このガラスの特徴を一つ一つ把握し、上手に使い分けることができれば、例えば、低音は〇デシベル落として中音は△デシベル落として、高音も△デシベル落したい。このようなことも可能になります。254通りという制限はありますが、この制限の中で自由に選択できるのです。
静けさも色々。静けさの質にも配慮すべき
人の耳は同じ音量なのに周波数によって感じる音量が全く異なります。そして音量が大きいほど、低い音が目立つように感じます。
これはオーディオの「音量つまみ」を上げてみるとすぐにわかります。音量調整のつまみは、一つですから低い音も高い音も関係なく等しく音量を上げています。それにも関わらず、低音のほうがより多く増えたように、耳は感じます。このように人の耳の癖を知ることも静けさを得るには大事な要素です。
防音を設計する
質問をさせていただきます。80デシベルの音を40デシベル落とせる内窓AとBがあるとします。AとBは費用もデザインも同じで、違うのはガラスはだけです。どちらの窓を選びますか?
もし気になる音は低音が多いなら、より低音を小さくする内窓を選べばいいですし、高音が多ければ高音をより落とせる内窓を選べばいいと誰もが考えます。
自然な考え方です。でもそうでない場合もたくさんあるのです。なぜなら「静かさ」を決めるのは「人」だからです。だから下のような意見も出てくるのです。
ここからが難しくなります。
いやいや、感度が鈍いからこそ、人の耳の癖を逆手にとって、ここはわざと高い音を落とせる内窓を選ぶべきとも考えられます。
「音量が大きいと低音が際立って聞こえる」という耳の癖を考えると、最初の感覚を疑って音の成分(周波数)バランスを検討したほうがいいという意見も出てきても不思議ではありません。
最終的には人がどう感じるかこの感覚を的確にとらえて対策を取らないと、「なぁ~んだ。防音窓(内窓)って効かないじゃん。」というつまらない結果になってしまいます。やはりDIYや音を調べない取付業者さんでは、どの内窓、つまりどのサッシと、どのガラスを組み合わせれば、気になる音を希望通りに落とせるのか正しい選択はできないと思います。
気密が確保できればガラス本来の防音性能が出せる
ガラスは防音性能が低いと言われますが、これは間違いですというのが私どもの言い分です。
1センチ厚みのガラスと、マンションの壁1センチ厚みを同じ面積で比べると、実はガラスのほうがほんの少し重くなります。防音には「質量則」という大原則があります。質量則とは、「同じ面積であれば重いものほど音を跳ね返す。」というものです。この質量則に照らし合わせて考えるとガラスのほうがほんの少し防音できるという事になります。ガラスは防音性能が悪いとも言い切れません。
「何言ってんの。15センチのガラスはないでしょ」とあなたはおっしゃるかもしれません。
確かにそうですが、ファミレスはどうですか。ファミレスの多くは幹線道路沿いにあります。そして窓だらけ。それにもかかわらず窓際に座っても「うるさい」とは感じません。
でもこのような環境ができるのはそれなりの工夫があるからです。ファミレスの窓が開かない窓になっているのは、密閉性=気密確保のためでもあります。このように気密が確保できれば、重いガラス=厚いガラスが持っている本来の防音性能をフルに発揮できます。
防音性能を引き出す「気密を確保」はフレームが担い、音を直接落とし、音の質を変えることもできのがガラスです。
大事な事。それはあなたが気にしているのは音を調べることです。
気密を確保し、正しくガラスを選べば、生活などでの音は問題のないレベルまで落とすことができます。次内窓の動画事例に進む>>
結果は同じ40デシベルです。機械にとってはどっちも同じ音量に聞こえます。でも人には同じには聞こえない。大事なのは人が「静か」と人が感じる事。落とせる周波数が違うというのはこのように音の印象(音質)にも強く影響を与えるのです。